護られた秘滝
2013/02/16 Sat. 00:03:00 edit
【秘瀑探検 その4】
俺:「どわわわ!!」
我がベンツのガラス窓に映った、わたくしの首をウネウネする物体。
そう!
これぞ、裏丹沢〈名物〉ヤマビル!
俺:「ぐえええ!!」
声にならない声を上げつつ、必死で強力ヤマビル忌避剤を取り出すわたくし。
ヤマビルの奴、まだわたくしの皮膚に充分には喰い付けていなかったとみえ、ピョロ~ンと宙を舞うと、ペタッと沢靴に落ちて、ネオプレンソックスとの間に潜り込もうとします。
俺:「ひいいい!!」
悪寒にブルブル震える手で、忌避剤をスプレーするわたくし。
たちまち苦悶にノタウチ回って、アスファルト上に転げ落ちるヤマビル。
しかし、この程度ではヤマビルは死にません。
俺:「ぬおおお!!」
今度はポケトーチ・ライターを取り出すと、火炙りを試みます。
ライターだけど、バーナー状に噴き出す1300℃の高熱の炎。
すると!
ヤマビルの奴、初めはグッタリした感じになるものの、たっぷり1分ほど炙り続けていると、口から泡を吹き出して、激しくウネリ出します。
その様は、先程の苦悶のノタウチが、まるでお遊びの如く感じられます。
「あの程度では、ホントに死なないんだな」ということが、ひしひしと分かってくる。
なんとも凄まじい生命力。
俺:「おえええ!!」
ターゲットが消し炭と化したろころで、ようやくバーナーの火を止めるわたくし。
地元の方々が、ヤマビルの被害で苦しんでおられるのが、我が身のこととして切実に感じられたのでした。
俺:「死んだ…」

【早戸大滝(落差50m)・主瀑布全景】 (神奈川県相模原市緑区鳥屋 『早戸川』)
兄:「そんな一匹で大げさな…」
俺:「おまえが、あの物体のグロさを知らないだけだろ!」
次男君と娘は、わたくしと一緒に、ネット動画にて「ヤマビル特集」を学習済み。
そのいやらしさは、強烈な印象と共に、心に刻まれています。
ところが長男君だけが、その〈真実〉を知りません。
子:「僕もダメ。即アウトだった」
娘:「だよね。だいたいお兄ちゃん、ヤマビル特集を観てないし」
子:「あれは、気持ち悪かったよな!」
娘:「最悪だったから!」
そう!
わたくしの首元には、未だに小さなイボの如く、ヤマビルにヒルジンを注ぎ込まれた跡が残っています。
もう少し発見が遅れていたら、いよいよ皮膚を喰い破られて、きっと首から背中にかけて血まみれになっていたことでしょう。
兄:「んな気持ち悪い動画を、なんで、わざわざ観んだよ」
子:「決まってんじゃん」
娘:「ね」
子&娘:「「滝好きだから」」
え~と…

【早戸大滝・主瀑布アップ】
早戸大滝は、首都圏の百選滝の中では、ズバ抜けてアプローチの難しい秘境の滝です。
ネットでは、「登山靴のまま、濡れずに行けました」みたいなレポートを見かけるのですが、実際にわたくしがチャレンジした時は、丸太の橋が流されてたりして、川を渡渉すること20回以上。
どう見ても、沢靴が正解でした。
さらに、赤テープなどの道標が少なく、時折、地形図を読みながら進まないと、うっかり支流に入り込んだりして迷ってしまう可能性があります。
しかも、娘を連れてくるのはムリっぽい岩場の難所が幾つか。
特に、早戸大滝手前の前衛滝を高巻くルートは、頼りなさげなトラロープを使って5mほど直登しなければなりません。
その上、早戸川は集水域が広いため、雨が降ると、アッという間に増水して逃げ場がなくなります。
で、雨後、そこらじゅうから湧いて出てくるヤマビルの群れ。
住所上は相模原市内なのですが、片道2時間近い遡行距離と、上記のような諸々の悪条件が重なるために、早戸大滝は、地元の神奈川県人にすら殆ど知られていない幻の秘滝なのです。

【早戸大滝・高巻き道から遠望】
子:「マジで、早戸大滝の観瀑って、ヒルが最大の核心なのか…」
娘:「かくしんってなに?」
子:「もっとも難しく困難な箇所。クライマックスとも言う」
兄:「ヤマビルがクライマックスかよ」
だがしかし、実際、ヤマビルに護られた秘滝って、結構、あったりするらしい。
兄:「例えば?」
俺:「新潟県の早出川(はいでがわ)とか、そうじゃないかな」
娘:「どこ、それ?」
子:「視後平の滝があるところだろ」
新潟県の五泉市の奥に、川内山塊という人の住まない秘境があります。
そこを流れる早出川流域の森は、雨後など、地面だけでなく、頭上の梢からもヤマビルが降ってくるらしい。
娘:「げげげ」
俺:「三重県の大杉谷なんかも、夏にはヤマビルが大量発生するぞ」
子:「七ツ釜滝とかある所だろ」
俺:「そう」
娘:「大量って?」
俺:「谷に入れば、必ずやられるそうだ」
娘:「うわあ…」
お嬢さん、ドン引きしてます。
兄:「まるで、兵士に護られた要塞だな」
子:「要塞か! さすが兄貴、言い得て妙だ」
俺:「はあ? ヤマビルが兵士だと? ふざくんな。兵士に失礼」
兄:「ちょっとちょっと。あくまで譬えだし」
娘:「せいぜいが使い魔だよね」
子:「その使い魔、誰が使役すんだよ」
みんな:「…」

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俺:「どわわわ!!」
我がベンツのガラス窓に映った、わたくしの首をウネウネする物体。
そう!
これぞ、裏丹沢〈名物〉ヤマビル!
俺:「ぐえええ!!」
声にならない声を上げつつ、必死で強力ヤマビル忌避剤を取り出すわたくし。
ヤマビルの奴、まだわたくしの皮膚に充分には喰い付けていなかったとみえ、ピョロ~ンと宙を舞うと、ペタッと沢靴に落ちて、ネオプレンソックスとの間に潜り込もうとします。
俺:「ひいいい!!」
悪寒にブルブル震える手で、忌避剤をスプレーするわたくし。
たちまち苦悶にノタウチ回って、アスファルト上に転げ落ちるヤマビル。
しかし、この程度ではヤマビルは死にません。
俺:「ぬおおお!!」
今度はポケトーチ・ライターを取り出すと、火炙りを試みます。
ライターだけど、バーナー状に噴き出す1300℃の高熱の炎。
すると!
ヤマビルの奴、初めはグッタリした感じになるものの、たっぷり1分ほど炙り続けていると、口から泡を吹き出して、激しくウネリ出します。
その様は、先程の苦悶のノタウチが、まるでお遊びの如く感じられます。
「あの程度では、ホントに死なないんだな」ということが、ひしひしと分かってくる。
なんとも凄まじい生命力。
俺:「おえええ!!」
ターゲットが消し炭と化したろころで、ようやくバーナーの火を止めるわたくし。
地元の方々が、ヤマビルの被害で苦しんでおられるのが、我が身のこととして切実に感じられたのでした。
俺:「死んだ…」

【早戸大滝(落差50m)・主瀑布全景】 (神奈川県相模原市緑区鳥屋 『早戸川』)
兄:「そんな一匹で大げさな…」
俺:「おまえが、あの物体のグロさを知らないだけだろ!」
次男君と娘は、わたくしと一緒に、ネット動画にて「ヤマビル特集」を学習済み。
そのいやらしさは、強烈な印象と共に、心に刻まれています。
ところが長男君だけが、その〈真実〉を知りません。
子:「僕もダメ。即アウトだった」
娘:「だよね。だいたいお兄ちゃん、ヤマビル特集を観てないし」
子:「あれは、気持ち悪かったよな!」
娘:「最悪だったから!」
そう!
わたくしの首元には、未だに小さなイボの如く、ヤマビルにヒルジンを注ぎ込まれた跡が残っています。
もう少し発見が遅れていたら、いよいよ皮膚を喰い破られて、きっと首から背中にかけて血まみれになっていたことでしょう。
兄:「んな気持ち悪い動画を、なんで、わざわざ観んだよ」
子:「決まってんじゃん」
娘:「ね」
子&娘:「「滝好きだから」」
え~と…

【早戸大滝・主瀑布アップ】
早戸大滝は、首都圏の百選滝の中では、ズバ抜けてアプローチの難しい秘境の滝です。
ネットでは、「登山靴のまま、濡れずに行けました」みたいなレポートを見かけるのですが、実際にわたくしがチャレンジした時は、丸太の橋が流されてたりして、川を渡渉すること20回以上。
どう見ても、沢靴が正解でした。
さらに、赤テープなどの道標が少なく、時折、地形図を読みながら進まないと、うっかり支流に入り込んだりして迷ってしまう可能性があります。
しかも、娘を連れてくるのはムリっぽい岩場の難所が幾つか。
特に、早戸大滝手前の前衛滝を高巻くルートは、頼りなさげなトラロープを使って5mほど直登しなければなりません。
その上、早戸川は集水域が広いため、雨が降ると、アッという間に増水して逃げ場がなくなります。
で、雨後、そこらじゅうから湧いて出てくるヤマビルの群れ。
住所上は相模原市内なのですが、片道2時間近い遡行距離と、上記のような諸々の悪条件が重なるために、早戸大滝は、地元の神奈川県人にすら殆ど知られていない幻の秘滝なのです。

【早戸大滝・高巻き道から遠望】
子:「マジで、早戸大滝の観瀑って、ヒルが最大の核心なのか…」
娘:「かくしんってなに?」
子:「もっとも難しく困難な箇所。クライマックスとも言う」
兄:「ヤマビルがクライマックスかよ」
だがしかし、実際、ヤマビルに護られた秘滝って、結構、あったりするらしい。
兄:「例えば?」
俺:「新潟県の早出川(はいでがわ)とか、そうじゃないかな」
娘:「どこ、それ?」
子:「視後平の滝があるところだろ」
新潟県の五泉市の奥に、川内山塊という人の住まない秘境があります。
そこを流れる早出川流域の森は、雨後など、地面だけでなく、頭上の梢からもヤマビルが降ってくるらしい。
娘:「げげげ」
俺:「三重県の大杉谷なんかも、夏にはヤマビルが大量発生するぞ」
子:「七ツ釜滝とかある所だろ」
俺:「そう」
娘:「大量って?」
俺:「谷に入れば、必ずやられるそうだ」
娘:「うわあ…」
お嬢さん、ドン引きしてます。
兄:「まるで、兵士に護られた要塞だな」
子:「要塞か! さすが兄貴、言い得て妙だ」
俺:「はあ? ヤマビルが兵士だと? ふざくんな。兵士に失礼」
兄:「ちょっとちょっと。あくまで譬えだし」
娘:「せいぜいが使い魔だよね」
子:「その使い魔、誰が使役すんだよ」
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