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Waterfalls in Japan

夏休みの自由研究から始まった、滝をめぐる家族の冒険譚!

3滝だけ

俺:「但し! お前ら、先に言っておくけど、横谷渓谷のクライマックスは3滝だけだぞ」
娘:「3滝?」
俺:「そうや」

乙女滝
霧降の滝
王滝
おしどり隠しの滝


娘:「は? 4っつあるけど」
俺:「この霧降の滝ってのが、落差3mしかないんだよ」
娘:「ナルホド」
子:「むう。雑魚滝」

霧降の滝@横谷_その1
霧降の滝(落差3m)全景】(長野県茅野市北山蓼科中央高原『横谷渓谷』

子:「かろうじて、滝と認められないこともない」
娘:「微妙だ」

ちなみに、霧降の滝・上流には、「一枚岩の滝」という、落差6m・全長150mの滝があります。
ところがわたくし、何を勘違いしたのか、下流滑滝を撮影してきてしまったのでした。

無名滝@横谷_その2
【無名滝(落差3m)下部】

娘:「で、滑滝ね」
子:「しかも無名ね」
娘:「更に微妙だ~」




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人工滝

娘:「ねね、この滝、名前がステキじゃない?」
俺:「お、どれどれ」

ふ~む。
長野の横谷渓谷にかかる『乙女滝』ですか。

子:「そういや、そんな名前のが、栃木にもあったねえ」
娘:「信州にあるってのが良いんじゃん!」
子:「そう? 栃木も捨てがたいだろ」
俺:「まあ待て。その、なんだ」
娘:「なに?」
俺:「横谷渓谷乙女滝ってのはね」
娘:「うん」
俺:「人工滝なんだよ」


沈黙。


乙女滝@横谷_その1
乙女滝(落差30m)概観】(長野県茅野市北山蓼科中央高原『横谷渓谷』

そんな家族の会話があった翌週、早速、横谷渓谷に向かいます。
駐車場に車をとめると、比較的すぐに乙女滝に到着。

俺:「おお。さっきの道路を横切ってた水路が、そのまま滝になってんのか」

パッと見、そんなに広くない水路なのですが、
推量が豊富なのか、滝になると、落ち口から一気に噴出する感じで、迫力があります。

俺:「それで、これのどこに『乙女』の要素があるんだろう?」

「龍」とか「不動」とか、むしろそんな感じの名前が似合いそうです。
もっとも、人工滝に、神霊を連想させる名前を付けるのは憚られたのかも知れませんが。

俺:「敢えて言えば、この末広がりな感じが、乙女の髪型っぽい?」

乙女滝@横谷_その2
【乙女滝・アップ】

俺:「で、どうや?」

子供たちに写真や動画を見せると、早速、感想を聞いてみました。

娘:「う~ん」
子:「これはどうやら観光対策っぽくね? 『乙女』ってのが」
娘:「所詮は人工滝だったね~」
子:「迫力があるだけに惜しいわ」

ま、だいたいわたくしと同じような感想ですな。

子:「そもそも、横谷渓谷って、もっと他に好い滝があっただろ」
俺:「あるね」
娘:「ふうん」

人差し指を頬にあてる娘。

娘:「じゃあ、そっちに行ってみよ」




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存在の理由

ところで、「禿(かぶろ)の滝」の右岸上方には、林道が拓かれています。

俺:「ホントに、滝のすぐ右岸崖上を走ってるんだ」
娘:「すぐって?」
俺:「直線距離にして、わずか30mあまり」
兄:「マジ、すぐやん」

地図上で確認すると、これが驚きの近さ。
文字通り、隣接していると言ってよいでしょう。

俺:「そして、この猿間洞(えんまぼら)沢には、万古渓唯一の堰堤があると言ったな」
娘:「うん」
俺:「堰堤が造られた原因は、この林道だと思われるんだ」
子:「おう、やっぱりか……」
娘:「は? どゆこと? あたし、わかんないんだけど」
俺:「この映像を見て欲しい」

無名滑滝@猿間洞沢_その1
猿間洞沢右岸の無名滑滝(目測落差55m)・概観】
(長野県飯田市千代・万古渓谷 『猿間洞沢』

こちらは、禿の滝から5分ほど下流の、猿間洞沢の右岸にかかる無名滑滝

俺:「この滝の上に、問題の林道があります」
妻:「なかなかの規模の滑滝だけど」
俺:「おう、目測落差は55mや」
兄:「水が無いし」
子:「でもまあ、この際、水量は問題じゃないよね」
娘:「この砂礫の山が問題?」
子:「そう! 映像だと、滝壺を埋め尽くしているけどさ」
娘:「うん」
子:「林道が無かったら、本来は、落ちてくるハズの無い砂礫なんだよ」


間。


兄:「ああ」
娘:「なるほど」
妻:「そういうワケね」

堰堤@猿間洞沢_その1
猿間洞沢・堰堤を上部から】

林道が拓かれると、その下流側にある谷が荒れるのは、よくある話です。

俺:「猿間洞沢の場合、この滑滝が、林道からの崩落土砂を集めちゃっている感じなんだ」

この滑滝以外に荒れてる場所はありませんでしたし、
むしろ、唯一の土砂崩落箇所と言ってよいでしょう。

俺:「まさに、一点集中で崩落中」

言ってみれば、富士山大沢崩れのようなものでしょうか。

俺:「ゆえに、下流側に、この巨大堰堤が造られたワケだ」
娘:「そゆこと」
子:「もう、堰堤の荒れ具合が、まさしくね」
妻:「でも、このお陰で、万古渓谷本流の渓相が守られてるんでしょう?」

ま、そういうことになりますか。

兄:「では、こちらの堰堤様が、万古の守護神であらせられた、と」
娘:「アホでしょ! 美しい景観の破壊神でしょ!」
子:「まてまて! そもそも『堰堤が神』って、そこからおかしいから!」

カブロ下段落口上流_その1
【禿の滝・下段落口の上流部】

禿の滝から猿間洞沢の上を林道が横切る地点までは、
遡行時間にして、わずか20分あまりでした。
下流から遡行するより、遥かにお手軽。

俺:「って言うか、最初から林道から下降すべきだったね」
子:「その心は?」
俺:「たぶん、ロープ無しでも行けちゃう」
子:「ああ……」
娘:「でもお父さん、プチ沢登りがしたかったんでしょ?」
俺:「それは、まあ……」
娘:「じゃあ、いいじゃない」

こうして、「禿の滝」全貌解明の旅が終了しました。
残された万古渓谷秘瀑は、あと「コウボウの滝」のみ。

子:「行く時間あんの?」
俺:「……」




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おかっぱ頭

支流から見ると、無名滝の右岸下流に合流してくる本流。
そこにかかるのが、この「禿の滝・上段(本瀑)」です。

俺:「まさに無名滝の撮影が終わって、上段にカメラを向けた瞬間やった」

そこに、サァーっと陽が差し込んで来ました。

カブロの滝_その1
禿の滝・上段・本瀑(落差11m)・概観】
(長野県飯田市千代・万古渓谷 『猿間洞沢』

子:「おお!」
娘:「う~ん、新緑がキレイ~」
妻:「ナイス・タイミング!」
兄:「鬱蒼とした下段と、正反対やんけ」
子:「そして瀑布の頭が、ちゃんとおかっぱ頭なってるし!」
娘:「これが本瀑で決定!

しかも、禿の滝は長い“歴史”を経ているらしく、
それが証拠に、あちこちに磨きこまれた旧流路を発見できます。

子:「南信州に雪なんて積もらないし、水だけで磨きこまれてるな」
妻:「だから、流れが複雑になってるのかも」
兄:「少なくとも万単位の年月」
娘:「歴史のロマン~」

そうして始まる、我が家の滝分析

娘:「ねね、大きく分けて、三段の段瀑っぽい?」
兄:「どうだろ、下二段と最上段の規模が違い過ぎるし、それはナイんじゃね?」
妻:「まあ、離れてるみたいだし」
子:「それ。おかっぱ頭の部分だけで、下二段の3~4倍はあると見るぜ」
娘:「落口が遠目だから? ホントはもっとデカイ?」
俺:「せやな」

兄:「それにつけても、このおかっぱ頭のインパクト!」
娘:「まんまだよね」
子:「明らかに、滝の名前の由来だねえ」

そうそう、
落差は、いつもの如く高度計11mに対し、目測6mでした。

カブロの滝_その2
【禿の滝・上段落口】

子:「ウム、右岸の溝部が、昔の落口」
妻:「ツルツルに磨きこまれちゃって…」
子:「侵食の様子がアリアリと分かるねえ」
娘:「ねね、“柔らかい花崗岩”

おお!
確かにこんな感じ、柿其渓谷牛ヶ滝で見たことがありますな。

兄:「で、見ればみるほど、このおかっぱ!」
子:「ホント、おかっぱ頭
娘:「ねね、別角度の映像はないの?」
俺:「ホレ!」

カブロの滝_その3
【禿の滝・上段上部】

娘:「崩れた……」
兄:「これは、最早おかっぱでは無い」
子:「だらけたな……」

真正面が、おかっぱ頭のハイライトでした




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インスピレーション

秘境「万古渓谷」の中の、秘瀑中の秘瀑でありながら、
殆ど取り上げられることの無い「禿の滝」(かぶろのたき)

その理由の一つが、
禿の滝がかかる猿間洞沢(えんまぼらさわ)にあると思われます。

俺:「沢の途中に、デッカイ堰堤があるんだわ」
子:「マジで?」
俺:「マジで!」
子:「マジでか……」
俺:「思うに、万古渓谷唯一にして最大の堰堤ではないだろうか」

万古渓谷本流が、沢登りやイワナ釣りで名を馳せているのは、
堰堤などが全く存在しない、自然のままの美しい渓相があるからでしょう。

俺:「それで期待を込めて猿間洞沢に入ると、突然ドカーンと堰堤
子:「まるで詐欺だろ」
俺:「そうなんだよ、分かってくれるか」

それでも、めげずに沢を登ってゆくと、
件の禿の滝・下段に行き着くワケです。

兄:「それが3m程度のカス滝だった……うん、心が折れるな」
娘:「ヤダ~」
俺:「でも聞いて欲しい。禿の滝・下段は、ホントに下段だったのだ」
娘:「それってつまり…」
子:「禿の滝は、やっぱり複合大瀑布だった?」
俺:「見よ!」

禿・無名滝_その1
禿の滝・支流無名滝(落差3m)・概観】
(長野県飯田市千代・万古渓谷 『猿間洞沢』


沈黙。


娘:「……」
妻:「また微妙な……」
俺:「ハハハ。落差は高度計だと3m。目測だと2mだ!」
兄:「いや、だから、なんだよコレ」
子:「美しい直瀑なのに、嬉しくないわ」
俺:「まあ、聞いてくれ」

禿の滝・下段の滝壺から5mほど高度を上げると、
流路的には本流の如く真直ぐなんだけど、水量的には明らかに支流な無名沢と、
流路的にはそこに横入りしてくる、水量たっぷりな本流が出会っています。

俺:「その出会いにかかる、支流の無名滝なのだよ」
子:「地図には、支流の水線が無いね」
俺:「そう。なのに本格的に切り立ってて、滝の奥に続くゴルジュが凄いんだ」
娘:「ゴルジュに入ったの?」
俺:「まさか」
娘:「なのに、凄いって分かったの?」
俺:「ああ。いわゆるインスピレーションってやつだな」

禿・無名滝_その2
【禿の滝・支流無名滝・落口】

子:「おお、ゴルジュ……」
兄:「なるほど。これはインスピレーションが湧くかも知れん」
妻:「なかなかの迫力ね」
娘:「ねね、全景写真より落口の写真の方が凄いって、どゆこと?」
子:「それはまあ、その…なんだろ」

ズバリ、滝の神秘でしょう。




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